革を刃型で切っていく裁断師、という仕事
裁断作業が好きです、というと意外な顔をされます。
だって裁断って1回クリックするたびにチャリン、チャリンとお金が入ってくる音が聞こえるじゃないですか?
私個人は普段小物がメインですが、靴業界で裁断がどれくらい重要か、という話を聞きましたのでまとめます。
「〜師」や「〜屋」という言葉がつく業種は専門職
靴業界は皮革業界の仕事の中でもこの〜師や〜屋、という言葉がきちんと付いている業界です。
甲革師や底付け師、などの専門職名がありますね。
かばんや小物などではひとつの技術に対する専門職名が存在しません。
「ヘリ返しが得意な財布職人」や「切り目のかばん職人」などの「特殊技能+基本職種」というような表記がほとんどです。
だから「いい」「悪い」という話ではなくて、「~師」や「~屋」という言葉がつく業種は専門職であり、専門スキルがあり、それだけお金が動いている、と思ってください。
裁断師という仕事
裁断師という仕事はクリッカーで商売をする専門職です。
「なんだ、クリッカーでパンパン抜いていたらチャリンチャリンとお金になるんだからいい商売ですな」と思いがちですが、もちろん専門職だけあり技術や目が重要です。
小物やかばんなどの場合は傷をどの程度許容するのか、革の流れに沿って取るのかどうか、などを考えます。
では、靴の場合は?
靴を扱う裁断師は結構大変
靴の裁断が大変、という理由はいくつかあります。
靴屋社長さん、どう大変なんですか?
「例えば染料仕上げでムラッケがある革の場合は靴の裁断をすごく気を使う。
1枚の革の中でも頭と背中、腹では革の色合いが異なるやろ?
でも靴を両足1足分作ろうと思ったらすべてのパーツをなるべく同じ場所で取らなきゃ1足揃えた時に色ムラが目立ってしまう。
靴は1足で同じ色で揃えないと商品にならないからな。
さらに靴の場合は吊り込みがあるやろ?そうなると靴を作る際にどう釣り込むのか、負荷がかかる場所にはひっぱりに強い流れに裁断しなければいけない。何も考えずに裁断していたらあかんねん。」
うっ!めんどくさいなぁ、確かに。
でも裁断師、という仕事は1回裁断する=1クリックや、1足分でなんぼ、という計算でしょ?
「もちろんそうやで。
とりあえず裁断すればいい、というやっつけ仕事をしていたら仕事依頼がもう来なくなるわな。
若手の裁断する人間には成長してほしいから最初は苦情を言う。でも何度か言って成長しないならばもう言わなくなり、仕事をまわさなくなる。」
じゃぁ腕がいい裁断師ならば工賃高くても仕事はバンバンくるものなんですか?
「本来はそうあるべきや。
靴の世界では元となる”木型”、それを元として作る”型紙”、甲革を釣り込む”吊り込み”や底を貼る”底付け”という工程があるうあrp。
型紙がきちんとできていると吊り込みは楽になる。いい型紙で引かれた革はすごく吊り込みがしやすい。
でも、裁断師がきちんと工程を理解して裁断してくれたパーツとそうじゃない場合は効率が全然違う。きれいに釣り込めない。
裁断はすごく重要な仕事やで」
じゃぁ裁断師は儲かるの?
じゃぁ儲かりそうじゃないですか
「ところが腕が良ければ儲かる、じゃなくて、腕が悪いところには仕事が来なくなる、というほうが業界の主流。
腕がいいところには仕事がバンバンと来て、腕がイマイチなところは全然仕事が来ないんや。
若い裁断師には『これじゃあかんやろ!』とアドバイスなり苦情言うけど、そうじゃないところはな。。(‘A`)y-~」
仕事を回さない、と?
「そこは察しろ!( ´Д`)σ)Д`)プニョプニョ」
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